在宅酸素を使用すると障害者手帳がもらえるのかご存知でしょうか?

主に肺や心臓の病気が原因で利用をすることになる在宅酸素

基本的に酸素をつけたまま生活をするようになるので、動作面など不便なことが出てくることが多いのが特徴です。

そんな在宅酸素を使い始めると、障害者認定が受けられるのか気になりませんか?

今回は在宅酸素を使うと障害者手帳がもらえるのかについて、認定基準や申請方法、受けられるサービスを解説していきたいと思います。

目次

在宅酸素と障害者手帳

人間の体は酸素を肺から取り込むことで体内の細胞を動かし、生命維持に必要なエネルギー代謝を保っています。

しかし、これが何らかの原因で十分に酸素を取り込めなくなった場合、体が酸素不足になり、軽い動きでも息切れをしてしまうようになります。

何とか体は機能を保とうとするのですが、足りない酸素を体中に行きわたらせるために心臓の負担が大きくなり、心不全を起こしてしまう危険性があります。

このような状態を防ぐために行うのが在宅酸素療法になります。

では、この在宅酸素と障害者手帳はどのような関係があるのでしょうか?

さっそく見ていきましょう。

在宅酸素とは

在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy : HOT)とは、主に肺の病気によって通常の呼吸では十分に酸素を体内に取り込むことができない状態になった場合に用いられるものです。

専用の酸素ボンベにカニューレを取り付け、鼻の孔に高濃度の酸素が直接流れるようにカニューレを装着するようになります。

肺の機能が弱ると十分な酸素を取り込めないのですが、取り込む空気中の酸素量が多ければ、たとえ機能が弱っていたとしても取り込める酸素量が相対的に増える、という考え方の治療法です。

在宅酸素を利用すると、以下のような利点があります。

  • 息切れが改善し、活動しやすくなる
  • 肺や心臓に余計な負担をかけなくなる
  • 酸素が足りないことで起こる症状(頭痛、イライラ、注意力低下、記憶力低下など)が改善される

これらの効果の結果として、寿命が延び健康な生活を送ることができる期間が増えていくということです。

在宅酸素を使うだけでは障害者にならない!?

在宅酸素が必要な状態は上記のように、主に肺の機能が通常より低下していることが挙げられます。

では、この状態は必ず障害者になるのでしょうか?

答えはNOです。

なぜならば、障害者認定を受けるためには、自身の状態が障害の基準に該当しているかどうかを見なければならないからです。

在宅酸素を利用していても、この基準に該当していなければ障害者として認められないのです。

では、その基準はどういったものなのでしょうか?

在宅酸素と障害者手帳の認定基準

在宅酸素を使用している方が身体障害者手帳を申請する場合、呼吸機能障害という項目に該当している状態かどうかを見るようになります。

呼吸機能障害はその程度によって1級・3級・4級の順で分かれており、数字が小さくなるほど障害の程度は重くなります。

それぞれの等級に該当するための基準は以下の通りです。

呼吸機能障害1級の場合

呼吸器の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの。

すなわち、呼吸困難が強いため歩行がほとんどできないもの、呼吸障害のため予測肺活量1秒率(以下、指数)の測定ができないもの、指数が20以下のもの、又は動脈血 O2分圧が50Torr以下のものをいう。

※指数とは、1秒量(最大吸気位から最大努力下呼出の最初の1秒間の呼気量)の予測肺活量(性別、年齢、身長の組合せで正常ならば当然あると予測される肺活量の値)に対する百分率のことである。

呼吸機能障害3級の場合

呼吸器の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの。

すなわち、指数が20を超え30以下のもの若しくは動脈血O2分圧が50Torrを超え60Torr以下のもの又はこれに準ずるものをいう。

呼吸機能障害4級の場合

呼吸器の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの。

すなわち、指数が30を越え40以下のもの若しくは動脈血O2分圧が60Torrを超え70Torr以下のもの又はこれに準ずるものをいう。

障害者手帳の申請方法と使えるサービス

ここまで、在宅酸素を使用している人が身体障害者手帳を申請するには、呼吸機能障害に該当する状態であるかどうかがカギであることをお伝えしてきました。

では、実際に呼吸機能障害に該当した場合、どのようにして申請をすればよいのでしょうか?

また、在宅酸素を使用しながら生活していると、酸素をしているがゆえの不便さも出てきます。

そういった不便さは、身体障害者手帳の申請によって解消され、生活上での利点はあるのでしょうか?

ひとつずつ見ていくことにしましょう。

障害者手帳を申請するには

身体障害者手帳を申請するには、以下の3つの書類を揃え、住所地を管轄する市町村役場の障害福祉関係の窓口か福祉事務所へ提出することが必要です。

  • 身体障害者手帳交付申請書

身体障害者手帳を申し込む申請書になります。上記窓口に申し出れば貰えます。

申請時にもらって、その場で書いて提出しても構いませんが、押印が必要な自治体もあるので、印鑑は忘れないようにしましょう。

  • 呼吸機能障害に関する診断書

身体障害者手帳申請のための専用の診断書です。書式は上記窓口に申し出れば貰えます。

まずは主治医に障害者手帳の基準に該当する状態かどうかを確認し、そのうえで診断書の作成を依頼しましょう。

  • 顔写真

出来上がった手帳に貼る写真です。縦4cm×横3cmの大きさで指定する自治体が多いです。

町中にある証明写真の機械で撮影したものでも構いませんので、事前に準備をしておきましょう。

受けられるサービス

身体障害者手帳の取得ができると様々なサービスを利用することができます。

呼吸機能障害で受けられる主なサービスはこちらからご確認ください。

心臓機能障害の方が受けられるサービスと共通する部分が多いのが特徴です。

 

その中でも、呼吸機能障害の方が生活上で気を付けなければならないのは

【火気に近づかないこと】

です。

在宅酸素は高濃度の酸素を直接体内へ取り込みやすくするものです。

高濃度の酸素は火気に触れると、一歩間違えば瞬く間に燃え上がってしまいますので、酸素ボンベはもちろん、酸素カニューレを装着している時も火気に近づくのは避けなければなりません。

 

呼吸機能障害の方で良くあるのが、在宅酸素を使用しながらタバコを吸う、ということです。

これは原疾患のためにも良くありませんし、タバコの火と酸素カニューレの距離がかなり近いので、間違えば大やけどを負ってしまう危険性があります。

在宅酸素を使用する方は絶対にタバコを吸わないようにしましょう。

IH調理器具への変更は補助が下りない!?

さて、もう1つ、在宅酸素と火気について取り上げないといけない項目は

【調理の時にどうするか】

です。

在宅酸素を使用する人が家事を担い、日々の調理をしなければならない場合、どうしても火気に近づかなければなりません。

ガスコンロを使用している場合、調理中は酸素の使用をしないか、別の人の調理をしてもらうかしないといけません。

 

ただ、動く時に酸素を必要とする状態であれば前者の方法はとれませんし、後者の方法も他に調理ができる家族がいなければ難しい方法となります。

そこで挙げられるのが、ガスコンロをIH調理器具に変更するということです。

IHであれば火気ではないので、在宅酸素を使用しながら安心して調理を行うことができます。

 

ただ、この器具の変更には身体障害者手帳による補助は一切下りないのです。

一部自治体では高齢者を対象に器具変更の補助金を出しているところもありますが、本当に稀なケースです。

この場合、在宅酸素を導入するような状態になった段階で調理器具の変更が可能かどうか、あらかじめ検討しておく必要があります。

終わりに

今回は在宅酸素と障害者手帳について解説していきました。

今回解説した主な内容は以下の通りです。

  • 在宅酸素は肺の機能が低下した方が使用するものです。
  • 在宅酸素を使用して障害者手帳を申請するには、呼吸機能障害の基準に該当しているか確認が必要です。
  • 在宅酸素は火気に近づけてはいけないので、IH調理器具への変更など生活の工夫が必要です。

在宅酸素を使用することで、それまでの生活のしにくさが一変して外出できるようになった方もいます。

そのためには、正しい使用方法を学ぶことと、障害者手帳に該当していれば申請を行い、様々な補助を受けて外出しやすい状況にすることが大切です。