心臓にステントを入れると障害者になるのでしょうか?

私たちの体の中の大切な臓器の1つである心臓。

その心臓にステントを入れると障害者として認定されるのか、知りたくありませんか?

今回は心臓にステントを入れると障害者になるかどうか、基準はどうかについて解説していきます。

目次

ステントと身体障害者手帳

ステント術とは

心臓にステントを入れる手術とはどういうものなのでしょうか?

そもそもステントとは金属でできた網目状の筒のようなものです。

心臓治療で使われるステントは主に狭くなった血管を人工的に広げ、その状態を維持することを目的としています。

ステントを用いた治療はまずカテーテルを用いた風船治療で狭くなった血管を広げ、その後にステントを留置し狭窄箇所を広げたままの状態にして血流を回復させるという方法が一般的です。

ステントは上記したように金属でできているので基本的に体内に残り続けますが、海外では最近体内で分解・吸収されるステントも用いられ始めています。

ステント術だけでは身体障害者にならない

さて、本題のステント術と身体障害者手帳の関係ですが、結論から言うとステント術を受けただけでは身体障害者手帳は必ずしももらえません。

これは「障害」の定義を考えれば、その理由がわかります。

障害は病気やケガなどで身体などに支障が現れ、それが完治することなく一生涯残るものです。

つまり、障害の無い元の状態に戻らないことが「障害」の定義となるのです。

ステント術はステントという異物を体内に入れていますが、手術をすることで人工的に取り除くことができます。

取り除いた箇所の血管は元の状態に戻るので、上記の定義を踏まえるとステント術は「障害」にならないのです。

 

心疾患で身体障害者手帳を取得するには

では心疾患で手術をするだけで身体障害者手帳を申請できるものはあるのでしょうか?

手術するだけで手帳の申請ができるもの

実は下記の手術は受けるだけで身体障害者手帳の申請ができるのです。

  • 心臓弁置換術

心臓の中にある心臓弁は、心臓の収縮の動きに合わせて全身に血液を送る大事な役割を担っています。

この心臓弁がうまく機能しない状態になった時、機能しない心臓弁を取り除き、人工弁を入れる手術を行うことがあります。

これを心臓弁置換術と呼びます。

心臓弁置換術は手術を行う心臓弁の部位によって名称が変わりますが、手術の内容はすべて上記の通りです。

人工弁は生体弁という他の動物(ブタやウシ)の心臓弁や心膜弁を用いたものと、金属で作られた機械弁の2種類があります。

それぞれメリットとデメリットがありますが、身体障害者手帳はどちらの弁を入れても取得できます。

また、最近は開胸せずにカテーテルを用いた弁置換術(TAVI)も行われるようになっており、こちらも身体障害者手帳の取得が可能となっています。

なお、2017年11月現在、弁置換術を受けた方は心臓機能障害1級の身体障害者手帳を取得することができます。

弁置換術についての詳しい解説はこちらの記事をご確認ください。

  • ペースメーカー留置

心臓の脈拍数を一定に保つペースメーカーという機械を体内に留置した場合も身体障害者手帳の取得ができます。

ペースメーカーには脈拍数を保つペーシング機能のあるペースメーカー以外に、除細動器としての役割をもつICD、上記2つの機能をもったCRT-D、両心室のペーシング機能をもったCRT-Pといった複数の種類のものが身体の状態によって使い分けられます。

2017年11月現在、これらのペースメーカーを留置すると心臓機能障害で身体障害者手帳を取得できます。

ただし、障害等級についてはペースメーカー留置後の状態によって1級・3級・4級のいずれかになるということと、手帳取得後3年以内に再認定を受ける必要があることが注意点になります。

等級判断にはメッツと呼ばれる身体活動能力を表す指標が用いられ、医学的かつ客観的に判断されるようになっています。

ペースメーカーと身体障害者手帳についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

ステント術で身体障害者手帳を取得するには

上記したようにステント術をもって身体障害者手帳は必ず取得できません。

ペースメーカー留置や弁置換術を受けていない人が心臓機能障害で身体障害者手帳を取得するには厚生労働省が定めた基準を満たす必要があります。

下記は心臓機能障害1級(18歳以上)の基準になります。

次のいずれか2つ以上の所見があり、かつ、安静時又は自己身辺の日常生活活動でも心不全症状、狭心症症状又は繰り返しアダムスストークス発作が起こるもの 。
a. 胸部エックス線所見で心胸比0.60以上のもの
b. 心電図で陳旧性心筋梗塞所見があるもの
c. 心電図で脚ブロック所見があるもの
d. 心電図で完全房室ブロック所見があるもの
e. 心電図で第2度以上の不完全房室ブロック所見があるもの
f. 心電図で心房細動又は粗動所見があり、心拍数に対する脈拍数の欠損が10以上のもの
g. 心電図でSTの低下が0.2mV以上の所見があるもの
h. 心電図で第Ⅰ誘導、第Ⅱ誘導及び胸部誘導(ただしV1を除く。)のいずれかのTが逆転した所見があるもの

つまり、ステント術をした後の状態が身体障害者手帳の基準に該当していれば取得できますが、基本的にステント術を受けた後は身体状況は改善することが多いため、よほどの重症でないと手帳の取得は難しいということになります。

身体障害者手帳を取得したい理由は何ですか?

ステント術をもって身体障害者手帳を申請したいと考える方には様々な理由があると思います。

手術後も生活ができないような身体状況であれば主治医と相談し基準に該当しているかどうか確認しましょう。

もし「手術をしたからもらえると思った」という理由であれば、今一度自身の状態を見直してみることをオススメします。

身体障害者手帳はあくまで生活を支える制度の1つに過ぎません。

もし生活問題の原因が他にあるとすれば、身体障害者手帳の取得をもってその問題が解決するとは限らないのです。

困りごとがあってその解決方法がわからないのであれば、まずはMSWへ相談してみて下さい。

MSWって何?という人はこちらをクリック!

何か問題を解決するためのヒントが得られるかもしれません。

終わりに

いかがでしたでしょうか?

今回解説した内容は以下の通りです。

  • ステント術とはカテーテルを用いた、狭くなった血管を広げる手術です。
  • ステント術を受けた方が全員身体障害者手帳を取得できるわけではありません。
  • 手術だけで身体障害者手帳を取得できるのは、心臓の弁置換術とペースメーカー留置術の2つです。

ステント術は重篤な心疾患を救う治療になります。

しかしながら、必ずしも身体障害者手帳に該当するとは限りません。

手帳の該当については主治医とよく相談しましょう。

そして、生活問題についてはMSWに相談してみましょう。