MSWは大変な職業なのか知りたくありませんか?
日々、患者のために働いている医療ソーシャルワーカー(MSW)という仕事。
世間一般の認知度はまだまだ低いものですが、生活問題を抱えた患者・家族にとっては無くてはならない存在です。
そんなMSWになりたい!と思う方もいることと思いますが、気になるのはどれだけ大変な仕事なのかということです。
今回はMSWは大変な仕事なのかどうかを、現役MSWである私の体験を交えながら紹介していきたいと思います。
目次
MSWはこんなとき大変!
どんな仕事でもある程度の大変さは存在します。
MSWという職業も例には漏れず、MSWならではの大変さがあるのです。
それは職業柄としての大変さだけでなく、勤めている医療機関という特色も絡むものがあるからです。
実際、私もMSWになる前と後とでは「こんなに大変なのか!」と思うことが数多く出てきたと感じています。
では、一体どんな時に大変と思うのでしょうか?
早速見ていきましょう。
MSWの役割を理解してもらえていない時がある!
MSWという職業は冒頭でも記載しましたが、社会的な認知度はまだまだ低い職業です。
例えば、私は過去に新聞の街頭取材を受けたことがあります。
取材と言っても、町行く人に声をかけて「〇〇のことについて一言!」という類のものです。
取材を終えると新聞記者は記事に名前と職業を載せて良いか尋ねます。
・・・そう、ここで困るのは職業を答えるということです。
堂々と「MSWです!」と答えても「何ですか、それ?」と返されることがほとんどです。
かといって「病院に勤務しています」と答えると「医者ですか?看護師ですか?」という質問が返ってきます。
世間一般的には、病院に勤めているのは医者と看護師というイメージが強いので、ある意味仕方が無いのかなと思っています。
ところが、病院に勤めている人でさえも、MSWという仕事や役割を理解していない人がいるのです。
医者や看護師などとは違って、目に見えて専門的な作業をすることが無いため、MSWのことをよく知らない人はどんな仕事をしている人なのかがわからないのです。
「こんなに大変なのに!」と思っても、それがすぐに理解されないのは辛いところです・・・。
連絡・調整が大変!
医療機関に勤務をしていると、様々なところで連絡や調整を必要とする場面が出てきます。
MSWはまさにその連絡・調整のプロとして活躍することが多い職業です。
それ故に、その連絡や調整が大変!ということが多いのが特徴です。
この連絡は主に患者・院内スタッフ・院外の関係機関の3つに分けられるのですが、それぞれで大変なことがあります。
患者・家族への連絡・調整
患者・家族へは面談の約束や電話相談、転院の調整などで連絡を必要とします。
ここで大変なのは、MSWの都合と患者・家族の都合が合わないことがあるということです。
主に日中勤務のMSWと、現役で仕事をしている患者・家族では連絡がうまく取れなかったり、都合が合わなかったりということが頻繁に起こります。
「この日でないと対応できない!」ということがお互いに噛み合わなかった時は、関係職種や機関に何とかならないか相談をしなくてはなりません。
その調整がどうしてもうまくいかなかった時、MSWが自らの身を切って対応することもあります。
よくあるのが勤務時間外での対応で、残業や休日出勤といったことをしないと話がすすまない時に、思い切ってMSW側が相手の都合に合わせることがあるのです。
院内スタッフへの連絡・調整
院内スタッフ間での連絡・調整も大変なことがあります。
医師をはじめ、それぞれ業務を行っているので連絡をしてもすぐに対応できないことはもはや当たり前となっています。
それ故に発生するコミュニケーションエラーも、MSWが介入する上で大変に思うことです。
連絡をした・してないというものや、伝えた内容が間違った解釈で捉えられていたということなどもあります。
さらに、各職種の連携がうまくいっていないと、それぞれが思うことをするあまり、方針が定まらずてんでバラバラのことを考えながら支援に当たっていた、なんてことも発生します。
そういったエラーが起きないようにMSWがうまく調整をしていくことがあるのですが、現状の整理のところから追っていくと、解釈の違いによって
「何でそこでそうなるの!?」
と思うようなことに直面する場面が多いです。
院外の関係機関との連絡・調整
患者・家族の支援を行う上で、院外の関係機関との連絡・調整は欠かせないものです。
しかし、この院外機関とのやり取りにも大変なことがあります。
それは、それぞれが所属する機関の特性や異なる職種の価値観などによって、互いの主張がぶつかり合うことがある、ということです。
こちら側がこうだ!と思っていても、相手側からすると間違っている!と思うことは世の中には多く存在しますが、この連絡・調整においてはまさにそのことを日々ダイレクトに感じることが多いです。
互いの主張がぶつかったままだと思うように話がすすみませんので、どこかで折り合いをつける必要があり、その調整で大変さを感じることが多いのです。
思っていた仕事内容と違うことがある!?
これは医療機関によって異なるのですが、MSWとして採用されても実際に行う業務が違うことがあるのです。
専門的なところで言うと、私の所属する医療機関では主に後方連携という、入院された患者の退院支援が中心の業務内容です。
しかし、医療機関によっては前方連携という、在宅や別の医療機関から受診や入院をしてくる患者の受け入れについての支援が中心のところもあります。
これは、医療機関の特性も絡むもので、どちらもMSWの業務として大切なものです。
しかし、中には「本当にMSWがしないといけないの?」と思うような業務をする医療機関も少なからず存在します。
MSWでなくてもできる事務作業や、患者に対する身体介護をしているところまであり、MSWとしての専門性をどう見つけていくか、組織内でMSWの地位をどう向上させていくかが課題となっているところもあるのです。
常に勉強しなくてはならないことが大変!
相談に来る患者・家族は1人として同じ人はいません。
状況や生活歴もバラバラで、利用できる制度やサービスも千差万別です。
MSWにはそんな患者・家族1人1人にあった、いわゆるオーダーメイドな支援が求められているのです。
そのために、MSWは日々勉強を欠かすことができないのが大変なことです。
法律や制度は日々変化をしているもので、その流れを追うことはもちろんのこと、現場にどう影響するか、患者・家族が困らないようにするにはどう対応したらよいのかをその都度考えていかなくてはなりません。
常にスキルアップを求められるMSWは、業務時間外や休日にある研修や学会に参加し、知識を蓄え、実践に生かしていく必要があるのです。
仕事外でも勉強を続けなければならないことが、入職したばかりのMSWにとっては大変と感じることなのです。
MSWであることのやりがい
さて、ここまでMSWの大変さをお伝えしてきました。
こんなに大変だと、MSWを目指している方は「やっぱりやめようかな・・・」と思ってしまうかもしれません。
しかし、MSWの仕事をすることは大変なことばかりではありません。
この大変なことなんて上回るほどのやりがいがあるのです!
MSWはいわば、このやりがいのために働いていると言っても良いくらい、素晴らしい職業です。
どのようなやりがいがあるのか、早速ご紹介いたしましょう。
いろいろな職種から感謝される!
医療機関内では様々な職種が働いており、それぞれが職種ごとの専門性を活かして業務を行っています。
MSWがかかわる業務は患者支援ですので、直接患者の生活に結びついた業務と言えます。
生活問題によって治療が受けられなかったり、退院が困難になったりというような状況にMSWとして介入し、問題解決に至ることができれば、患者はもちろんのこと、関わっている他の職種からも感謝されます。
他の職種にとってMSWは、自らの専門性を発揮できなくする生活問題を解決し、必要な治療やリハビリなどを受けることができるようになり、さらには病気の再発予防にもつながる支援を行える状況にしてくれる存在と言えるでしょう。
もちろん、感謝されるためにはきちんと仕事をしなければなりませんが、その分、関係職種からの信頼を得ることができます。
困難ケースを解決できた時の達成感!
病院に来る患者・家族の中には簡単には解決できない生活問題を抱えている方もいます。
MSWだけでなく、多職種と協働して問題解決に動かないといけないようなケースです。
時には八方塞がりのような状況の方もいて、どうすれば良いか悩むこともあります。
しかし、そのケースが解決の方向へ進んだ時のうれしさは何物にも代えがたい達成感へと昇華します。
登るのが困難な山ほど、山頂に辿り着いた時の達成感が大きいのと同じように、困難なケースであるほど、解決した時は「本当に良かった」と心から思えるのです。
この達成感を味わうことができたMSWは、他の困難なケースでも挫けずに問題解決に向けて支援を続けることができるのです。
患者・家族からの感謝が一番!
MSWに限らず、福祉関係の職種すべてに共通して言えることは、関わっている患者・家族からの感謝が一番の原動力になっているということです。
どんなに大変な思いをしても、「ありがとう」の一言でそれまでの苦労が報われるのです。
「ありがとう」の言葉は自分の支援がどうであったかを映す鏡のような存在です。
多くの「ありがとう」を得ることができたのならば、自分が行ってきたことはただの自己満足ではなく、本当に患者・家族のためになったことだと振り返ることができます。
私もこの感謝の言葉があるからこそ、大変な思いをしても今日までMSWとして働き続けてくることができました。
これからも、この感謝の言葉が返ってくるように精一杯支援を行っていきたいと思っています。
終わりに
MSWが大変な仕事かどうか、お分かりいただけましたでしょうか?
今回お伝えした内容をまとめると、以下のようになります。
- MSWの仕事は認知度がまだ低く理解されていないため、大変に思うことがあります。
- 主業務の1つである連絡・調整は、多くのMSWが大変に思うことの1つです。
- 常にスキルアップが求められるため、勉強が欠かせません。
- しかし、MSWは多くの職種や患者・家族から感謝される職種で、そこにやりがいがあります。
確かにMSWは大変な仕事ですが、ただ大変なだけではなく、信頼と感謝という大きな見返りがあります。
将来、病気やケガで生活問題を抱えることになった時、MSWがそばにいてくれたらどれだけ心強いことでしょう。
そんな大切な存在であるMSWは、今日も患者・家族のために働いています。
この記事を1人でも多くの人にご覧いただき、MSWのことを知ってもらえたらと思います。