地域包括ケア病棟という病棟をご存知でしょうか?
急性期病院を退院するのは不安だけど、自宅退院を目標としたい、という人にとっての良い選択肢となる病棟です。
今回は地域包括ケア病棟について解説していきたいと思います。
目次
地域包括ケア病棟とは
急性期病院と自宅退院の間にある選択肢
地域包括ケア病棟とは、急性期病院を退院する、病状が安定した人に対して、在宅や介護施設への復帰支援に向けた医療や支援を行う病棟のことです。
病棟は他にも回復期リハビリテーション病棟や療養病棟などといった機能をもつ病棟がありますが、地域包括ケア病棟はまた別の機能をもつ病棟となってるのです。
地域包括ケア病棟はその中でも、言わば、急性期病院と自宅退院の間にある療養場所の選択肢ということになります。
過去は亜急性期病棟という名前だった
地域包括ケア病棟は過去は亜急性期病棟という名前の病棟でした。
急性期を脱した状態ではあるが、まだ治療やリハビリが必要な状態=亜急性期の人を対象とした病棟です。
この名称は2014年の診療報酬改定により、現在の地域包括ケア病棟へ変更になりました。
変更の内容は名称だけでなく、入院料の算定が変わったことなどありますが、患者さんにとってはより自宅退院に向けた内容の医療に変わったと言うことができます。
詳しくは後述致します。
地域包括ケア病棟の特徴
では、地域包括ケア病棟の特徴は何なのでしょうか?
具体的に見ていくことにしましょう。
自宅退院・介護施設入所が原則
地域包括ケア病棟に入院する患者は原則として自宅退院か介護施設への入所がゴールとなります。
救急の状態になり急性期病院へ転院すること以外で、別の病院へ転院することが難しい病棟になっています。
これは、地域包括ケア=在宅へ戻ることを前提とした入院だからです。
地域包括ケア病棟はあくまで自宅退院までのつなぎとしての役割を担っています。
そのため、最終的なゴールが病院になってしまうと、その趣旨から外れてしまうのです。
また、ここで言う在宅は自宅だけでなく、介護施設も含まれます。
これは介護施設が患者にとっての生活の場=自宅であるとする考え方があるからです。
逆に言えば、在宅への退院を目指す方にとっては、その間を取り持つ機能の病棟になるため、つなぎの機能を十分生かすことができる場所になることでしょう。
最大入院日数は60日
地域包括ケア病棟に入院できる最大日数は60日=2ヶ月と決められています。
そのため、60日以内に退院できるよう治療やリハビリを行うようになります。
この入院期間も、地域包括ケアは在宅復帰という観点で支援を行っているという考えであることを明確にしたものであると言えます。
以上のことから、あらかじめ60日以上の長期の入院が必要となる場合や転院を必要とする場合には地域包括ケア病棟への入院はできないことになっているのです。
急性期病院並みの医療は受けられない
地域包括ケア病棟で受けられる医療やリハビリは、療養型病棟と同じように決められた費用の中で対応するようになります。
そのため、急性期病院と同じような高額な治療はできないようになっています。
高額な治療を必要とする急性期の状態を脱した人が入院できる病院となるのです。
高額な治療を継続しないといけない場合、病院間の話し合いによって以下のような対応がとられることがあります。
- 地域包括ケア病棟を退院した後に急性期病院へ外来通院する
- あらかじめ薬価の高い薬を急性期病院で処方してもらい、転院後も内服し続ける
ただし、病院間で上記のようなやり取りをする場合、どちらかの病院が医療費を負担する(持ち出し)ことから対応が難しいと言われる可能性もあります。
原則として、高額な治療は退院まで受けられないということを覚えておきましょう。
地域包括ケア病棟の対象患者
上記のような特徴がある地域包括ケア病棟での入院を最大限に活かすには、どのような人が対象となるのでしょうか?
地域包括ケア病棟の入院期間内に自宅退院が見込める人
最大60日以内のリハビリで回復し、自宅への退院が可能な場合、自宅までのワンクッションとしての受け皿という利点を生かすことができます。
特に、介護保険を利用する必要がある人の場合、申請から認定が下りるまで約1ヶ月かかりますので、リハビリを続けながら申請を行い、結果が下りた後に退院しサービスを受けながら自宅で生活できるようになります。
施設入所までの待期期間が必要な人
入所する施設は決まっているが、空きがすぐに無く待機が必要な人も地域包括ケア病棟の利点を生かすことができます。
この場合、60日以内に希望する施設が空く目処がついていることが条件となります。
急性期病院から自宅退院して、自宅で待機するには不安がある人にとっては、自宅に帰ることなく直接施設に入所できる方法の1つとなるでしょう。
医療処置の習得に時間がかかる人
急性期病院から自宅退院する場合に、退院後何らかの医療処置を自身で行わなければならない状態の人もいます。
急性期病院での入院中に処置の方法を覚えて帰ることができれば問題ないのですが、高齢の人など方法を覚えるのに時間を要する人も中にはいます。
そのような人が処置の方法を覚えるための時間として、地域包括ケア病棟を利用することも考えられます。
中途半端に処置の方法を覚えて帰り、うまくいかずに再入院となってしまうより、転院という形で少し入院期間を延ばし、その間に処置を完璧に覚えて帰る方が、身体への負担や余計な入院費の支払いというものを抑えることにつながるのです。
終わりに
地域包括ケア病棟は在宅退院への架け橋となる病棟です。
今後ますます必要となる地域包括ケアのなかで、自宅で生活を続けるための重要な存在となることでしょう。
もし急性期病院を退院する時に、直接自宅退院するのが不安な状況であれば、病院スタッフと相談してみて下さい。
転院の最終判断は主治医になりますが、状況を総合的に加味して方針が決められると思います。
安心した療養生活が送れるようになりましょう。