心臓移植の費用がどれくらいかかるのかご存知でしょうか?
重度の心臓病を抱えている人の希望である心臓移植手術。
移植手術を受けるために募金活動を行うといったニュースを見たことがある方もいらっしゃるかと思います。
今回は心臓移植の費用がどれくらいかかるのかと、費用をサポートしてくれる制度について解説していきます。
目次
心臓移植の内容と対象者
心臓移植とは
心臓移植は重度の心臓病を患っている人が、自身の心臓を摘出し、脳死状態にある他者の心臓を移植する手術のことです。
脳死状態にある臓器提供者(ドナー)から提供される心臓は、他の臓器以上にデリケートなものであり、ドナーからの心臓摘出から搬送、患者への移植までは時間との勝負になります。
移植手術を希望する人は日本臓器移植ネットワークに登録し、自身に適合するドナーが見つかるまで待つ必要があります。
2017年10月末の時点で、心臓移植を希望する登録者数は646人、登録を開始した1997年10月からの累計は1419人になります。
ただし、この中で実際に手術を受けられる人は約半数であり、術後も臓器が適合せずに亡くなる人も少なくありません。
心臓に限らず、移植手術はドナー不足が問題となっており、手術を受けたくても簡単には受けられないという現状があります。
心臓移植の対象者
このような心臓移植を受ける対象となる人は、現時点での医学であらゆる治療法を行っても状態改善が見込めない重度の心臓病を患っている人が対象になっています。
具体的には、内科的な治療としてβ遮断剤やACE阻害剤を用いた治療を行い、次に強心剤の点滴や考えられる手術を試みます。
それでも心機能が改善しなければ補助人工心臓(LVAS)を併用した治療を行い、それでもなお心不全が改善しない場合にはじめて心臓移植の適用となるのです。
また、上記の状態に該当していても、以下のような状態を併発している場合は手術の対象外となってしまいます。
- 心臓以外の重症疾患(肝機能障害・腎機能障害・慢性閉塞性肺疾患・悪性腫瘍・重症自己免疫疾患など)がある場合
- 活動期の消化性潰瘍や感染症、重症糖尿病、重度の肥満および重症の骨粗鬆症のある場合
- アルコール・薬癖、精神疾患のある場合
- 重度の肺高血圧を伴う場合
待機者の中でも、重症度によって移植を受けられる優先順位が決まっており、ドナーが見つかっても必ず手術が受けられるわけではありません。
また、ドナーと血液型が同じであることも絶対条件となります。
心臓移植の費用と内訳
では心臓移植にかかる費用はどのようなものがあって、どれくらいの金額なのでしょうか?
心臓移植にかかる費用
各項目について1つずつ解説していきます。
- 登録費
日本臓器移植ネットワークへ登録するための費用です。
ネットワークへ登録することで初めて移植手術を受ける意思表示をしたことになると言えるでしょう。
登録料は3万円で、特に補助等もなく実費負担となります。
- 更新費
ネットワークへ登録した後、手術を受けるまでの間は年間5,000円の更新費を支払う必要があります。
この費用も実費負担となります。
- 移植手術までの医療費
移植手術を受けるまでの医療費は通常の高額療養費制度での自己負担額と同じになります。
そのため、所得や年齢に応じて自己負担割合や支払う上限額が異なっています。
- 移植手術費
実際にドナーが見つかり、移植手術を受ける際にかかる費用です。
心臓移植の場合、この費用も高額療養費制度の対象になりますので、移植手術までにかかる医療費と負担額は変わりません。
- 臓器搬送費
移植手術が高額になる一番の要素となる費用です。
ドナーから摘出された臓器は各臓器ごとで推奨される時間内に手術を受ける人のところへ搬送しなければ、摘出された臓器が痛み、術後の合併症の危険性を高めたり、手術自体ができない状態になってしまいます。
そのため、いち早く患者の元へ臓器を搬送する手段を確保する必要があります。
ドナーのいる病院が患者の病院と離れていなければ自動車で搬送するため、費用はそれほどかかりません。
しかし、少し離れた場所であれば渋滞を考慮しなくてもよい搬送方法として基本的に空路を選択するため、ヘリコプターをチャーターすることになります。
ヘリコプターの燃料費がおおむね30万~50万円必要となり、一気に負担額が高くなります。
さらに遠距離となると、チャーター便を手配し移動するようになりますので、200~500万円程度の負担が発生します。
場合によってはチャーター便で最寄りの空港へ移送し、そこから自動車やヘリコプターを利用するため、とても高額な負担が発生するようになります。
- 臓器斡旋費
移植手術が成功した際に移植コーディネーターへ支払う成功報酬のようなものです。
一律10万円として設定されており、ネットワークに支払います。
- 移植手術後の医療費
移植手術後の医療費も高額療養費の負担と同じです。
費用を安くする方法
上記した移植に関する費用を安くするにはどうすれば良いでしょうか?
- 登録費・更新費・臓器斡旋費
ネットワークに支払わなければならない必要なお金であるので、実費負担となり減額制度はありません。
ただし、住民税非課税世帯であれば、証明書類をネットワークへ提出することでこれらの費用はすべて全額免除となります。
- 移植手術まで~移植手術~術後の医療費
心臓の移植手術に関わる一連の医療費は高額療養費の対象になります。
70歳未満であれば限度額適用認定証の提示により、自己負担上限額までの支払いで済むようになります。
高額療養費について知りたい人はこちらで詳しく解説しています。
また、70歳以上の人であれば、保険証類の提示により自動的に自己負担上限額までの支払いで済むようになりますので、特別な手続きは原則必要ありません。
70歳以上の人の医療費負担についてはこちらで解説しています。
- 臓器搬送費
ドナーのいる場所によっては非常に高額になる費用ですが、一旦費用を支払うことができれば、加入している健康保険の窓口へ申請することで費用の7割分の金額が還付されます。
療養費の請求と呼ばれる手続きで、高額な費用になったとしても最終的な負担額はある程度少なくなります。
ただ、一時的に高額な負担をしなければならないのは変わらないので、必要経費を一時的にでも負担できるかどうかが移植手術を受けるための壁となっています。
終わりに
心臓移植を受けるためのハードルはドナーが見つかるかどうかと臓器搬送費の2つになります。
臓器搬送費については一時的な負担さえできれば療養費の申請で軽減できますが、費用そのものを軽減できる制度は現時点では無いので、負担ができるかどうかにかかっています。
一方、ドナーも見つかるかどうかは時の運と言えますが、もし移植に理解を示す人が増え、臓器提供の意思表示をする人が増えればこの問題も少し解決するかもしれません。
身近な人とも一度、臓器移植について話し合ってみてはいかがでしょうか?