心臓病の人が薬を飲み忘れないようにするにはどうしたらよいでしょうか?
一度病気になると、生涯付き合っていかなければならない心臓病。
病気を悪化させないためには薬を飲み忘れないことが大切です。
今回は心臓病の人が薬を飲み忘れないようにするためのコツや公的サービスについて解説していきます。
目次
心臓病と薬
病気の悪化を防ぐための薬
心臓病になると病気の悪化を防ぐために薬を処方されます。
この薬は風邪などのように症状が治まるまで飲み続ければ良いというものではなく、特に症状が無い時も飲み続ける必要があります。
症状が無いからと途中で薬を止めてしまう人もいますが、病気の悪化を防ぐ意味合いが強いため、たとえ症状が無くても飲み続けなければならないのです。
特に、心臓病の治療のために処方される薬は飲み忘れや自己判断での中止を行うと状態が悪化し、心臓病を再発させる危険性が高いものになっています。
このことを患者本人や、それを支える家族や支援者もよく把握しておかなければなりません。
心臓病で処方される薬の種類
心臓病治療のために処方される薬はその目的によっていくつか種類が分かれています。
1つの薬だけではなく、複数の薬を併用して飲むことでより良い効果を発揮することにつながります。
以下に、主な薬の種類とその目的について記載いたします。
- 硝酸薬
主に狭心症の治療で用いられる薬です。
狭心症は心筋へ栄養を送る冠動脈という血管が狭くなることで、心筋に十分な栄養が届かず心機能が低下する病気です。
硝酸薬はその血管を広げ、狭心症の症状を緩和することを目的にしています。
- カルシウム拮抗薬
狭心症や高血圧の治療で用いられる薬です。
血圧を下げ、異常に高くなった血圧を正常な値に戻すことを目的にしています。
- β遮断薬
交感神経と副交感神経のバランスを調整し、心拍数を抑えることを目的にした薬です。
心房細動など、異常に心拍数が上昇したり乱れたりする病気の他に、慢性心不全など心臓に負担をかけすぎないようにすることを目的にする場合にも用いられます。
血管の収縮を抑え、血圧を下げる効果を併せ持ったα・β遮断薬もあります。
- 抗血小板薬
血液を固める役割を担っている血小板の働きを抑制するのを目的とした薬です。
動脈硬化がすすんだ血管では、血流が早くなると血管内の損傷が起きやすくなります。
その損傷箇所を血小板が修理するのですが、時として修理箇所(皮膚でいうかさぶた)が大きくなり、血栓となって血管を塞いでしまう危険性が出てきます。
この血小板の働きを意図的に抑え、血栓ができることで発症する病気を防ぐことを狙いとしています。
- 抗凝固薬
抗血小板薬と役割は似ていますが、血小板に作用するのではなく、血液の流れが悪いことで発生する血栓を予防する効果を持っています。
血流が悪くなるのは静脈であり、静脈血栓を防ぐことを目的にしているのです。
- ジギタリス薬(強心配糖体)
心臓の拍出量を強くする、強心作用のある薬です。
うっ血性心不全の治療の用いられる薬で、ステロイドに近い構造をしているのが特徴です。
- 利尿薬
心不全なのに利尿薬?と思われる人もいるかもしれません。
しかし、体内の余計な水分を尿として出すことで、心臓への負荷を少なくする効果があり、心不全治療には欠かせないものなのです。
- 抗不整脈薬
文字通り、不整脈の治療に用いられる薬です。
ナトリウムに作用するNaチャネル遮断薬(Ia・Ib・Ic)と、カリウムに作用するKチャネル遮断薬に大別することができます。
心臓病の薬を飲み忘れない方法
では、心臓病の薬を飲み忘れないようにするにはどうすればよいでしょうか?
薬の効果を理解する
まずは薬の効果をきちんと理解することが重要です。
薬の効果は上記したように多岐にわたり、それぞれ目的や効果が異なるものです。
処方された薬はすべて正しく内服することで初めて狙った効果を得られるものですので、まったく飲まなかったり、自己判断で薬の量を調節することは絶対に止めましょう。
最近は処方薬がどのような効果を持つものなのかが記された説明用紙を渡す病院がほとんどです。
「いらないから」といって用紙をすぐに捨ててしまうのではなく、自分の病気に対してどのような薬が処方されているのかを読んでみることで、病気への理解にもつながるのです。
他者も薬の管理に手伝ってもらう
心臓病が進行すると治療のため、処方薬の種類も増えてきます。
どの薬をどれだけ飲めばよいのかわからなくなることは、薬を飲めていない理由として挙がるほどの問題です。
特に、記憶力や判断力が衰えがちな高齢者にとって、薬の管理は難しいものとなるでしょう。
そのため、自分だけでなく、他の人にも薬の管理を手伝ってもらうことを心がけてみましょう。
薬の種類や量があっているかどうか、ダブルチェックを行うことで内服量を間違えることが少なくなります。
また、薬の飲み忘れも声かけ1つで防ぎやすいものですので、上手に活用してみましょう。
お薬カレンダーを利用する
処方薬が多く、さらに飲み忘れも多い人のために、お薬カレンダーという道具を活用する方法が挙げられます。
病院や薬局で薬をもらったら、1日分をポケットの付いたカレンダーに分けていれることで、薬の種類や量の間違いをあらかじめ防ぎます。
そして、その日に飲んだ薬はカレンダーから消えてなくなるので、まだ薬が残っている=飲み忘れているということが瞬時にわかるものになっています。
お薬カレンダーは1週間分や2週間分といった期間が分かれているものや、朝・昼・夕・眠前と1日の中で飲むタイミングを分けられるものも多く、壁掛けのもので1,000円~2,000円程度で購入できます。
訪問看護を利用する
訪問看護を利用することで、定期的に体調管理や内服確認を受けることができます。
訪問看護は医療保険で利用する場合と介護保険で利用する場合の2種類がありますが、いずれも主治医の指示のもと自宅へ訪問するようになります。
よほどの重症でない限りは毎日来てもらうことができないのですが、定期的なチェックを受けることで内服忘れの予防だけでなく、病気の悪化を未然に防ぎ、体調変化があれば受診をすすめるなど病気の早期発見につながるのです。
上記のお薬カレンダーと組み合わせると、薬をもらった後の配薬から介入してもらえるので、間違える可能性が低くなります。
薬を一包化してもらう
どうしても配薬が難しかったり、錠剤をシートから取り出すのが難しかったりといった人には、1回分の薬をあらかじめ一つの袋にまとめていれてもらう一包化がオススメです。
一包化された薬は当然シートから出た状態になっていますし、袋を切る動作さえできれば簡単に飲むことができます。
何より、処方の段階で1回分にまとめられているので配薬間違いが無いのが特徴です。
一包化した薬はお薬カレンダーや訪問看護と組み合わせることで、飲み忘れの可能性をかなり低くできるものです。
ただし、一包化はどの病院でもできるものではないので、場合によっては院外処方の処方箋をもらって、調剤薬局に提示し一包化を依頼しなければならないこともあります。
また、薬によっては一包化できない種類のものもありますので、注意しましょう。
お薬手帳を活用した処方薬の見直し
心臓病だけでなく、他に病気を抱えている場合、処方薬の種類や量が多くなる可能性があります。
特に、自己判断で複数の医療機関にかかり、薬を処方されていると、同じ効果の薬を重複してもらったり、必要な薬をもらえていなかったりすることがあります。
このような場合、自身が飲んでいる薬の種類や量が適切なのかどうかを確認することが大切です。
お薬手帳は自身が現在どのような薬を飲んでいるのかが記載されているもので、薬局等で薬をもらう時に同時にもらえるものです。
お薬手帳は薬をもらう時には必ず提示することと、薬の量が増えていると思った時は主治医や薬剤師にお薬手帳を見せ、処方内容を見直してもらうことも大切です。
終わりに
心臓病を防ぐためにはきちんと薬を飲むことが大切です。
薬の飲み忘れを防ぐための工夫を行い、健康を維持できるようになりましょう。
もし薬の飲み忘れのことで困っているのであれば、主治医や薬剤師に相談してみましょう。
また、訪問看護を利用したい場合は、介護保険を利用している場合はケアマネジャーへ、そうでない場合はMSWへ相談してみるのが手です。
安心した在宅生活を送れるようになりましょう。