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脳卒中はたとえ仕事中であっても発症する可能性がある病気です。

もし仕事中に発症した時、労災保険は適用になるのでしょうか?

今回は仕事中に発症した脳卒中と労災について解説していきます。

目次

脳卒中と労災

仕事中に発症した脳卒中

脳卒中はどんな状況であっても発症するリスクがある病気です。

そして、仕事中に発生したケガや病気については労災保険の適用になります。

例えば作業中の事故で骨折をした、などの例であればケガや病気と業務内容との因果関係がはっきりしているためわかりやすいと言えるでしょう。

しかし、脳卒中のように明らかに業務が関係しているかどうかがわかりにくい病気もあります。

この場合、労災適用はどのように判断するのでしょうか?

労災適用はどう判断するのか?

脳卒中の場合、発症する可能性が高くなるかどうかは本人の健康状態と環境に左右されるものです。

仕事中に脳卒中を発症するケースは、上記のようにもともと脳卒中になりやすいような健康状態であったかと、脳卒中になるリスクを高める環境であったかがカギを握ると言っても過言ではありません。

そのため、脳卒中を発症した直接の原因がもともとの健康状態にあるのか、健康状態を悪化させるような環境にあるのかが労災適用のポイントの1つになります。

 

脳卒中に関する労災基準

では脳卒中に関する労災の基準はどのようになっているのでしょうか?

脳・心臓疾患の労災認定という厚生労働省の通達により、以下のように定義されているのです。

過重負荷があったかどうか

脳卒中になるリスクを高めるような過重負荷があったかどうかです。

発症時点から前日までの間に身体に極度の負担がかかったり、強度の精神的負担(緊張・恐怖・興奮・驚愕など)があったか、業務環境に急激な変化があったかを判断します。

極度の負担は心身の適応能力を上回る負荷になり、結果として病気を発症する可能性を高めるというものです。

短期間の過重業務があったかどうか

発症前からおおむね1週間以内に、日常業務と比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせた業務を行ったかどうかを判断します。

判断は業務量や作業環境等を考慮し、患者本人だけでなく同じ条件下で働いていた同僚についても同様の結果(脳卒中の発症)になるかどうかを見ていきます。

そのために業務による負荷要因を見ることになり、主な負荷要因としては以下の項目が挙げられます。

  • 労働時間

日常業務に比べて明らかに労働時間が長かったかどうかです。

時間外業務をどれくらい行ったのか、通常に比べどれくらい長かったのかという点を見ます。

  • 不規則な勤務

予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度、事前の通知状況、予測の度合、業務内容の変更の程度等を客観的に見て判断します。

突然の残業や業務内容の著しい変換などがあったかどうかです。

  • 拘束時間の長い勤務

拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容、休憩・仮眠時間数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)等を客観的に見て判断します。

休憩時間は適切にとられていたか、業務に拘束される時間が業務内容に比べ異常に長くなかったかなどです。

  • 出張の多い業務

出張中の業務内容、出張(特に時差のある海外出張)の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、宿泊の有無、宿泊施設の状況、出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張による疲労の回復状況等を客観的に見て判断します。

業務にかかる移動の面も見ていくというわけですね。

  • 交替制勤務・深夜勤務

勤務シフトの変更の度合、勤務と次の勤務までの時間、交替制勤務における深夜時間帯の頻度等を見ます。

  • 作業環境(温度環境・騒音・時差)

極端な寒冷地や高温の中での作業環境、騒音の程度を判断します。

5時間以上の時差を生じるような移動も対象になってきます。

  • 精神的緊張を伴う業務

日常業務の中での精神的緊張の度合いや、直近で起きた出来事による緊張への影響を考慮します。

長期間の過重業務があったかどうか

長期にわたっての過重業務があった場合、心身へ与える影響は大きいことが明らかになっています。

疲労の蓄積による発症が法的にも認められるようになっているのです。

この場合、発症前おおむね6ヶ月間の労働時間を見ていくことになります。

1ヶ月あたり45時間を超える時間外業務を行った場合、時間数が増えるほど病気と労災の因果関係が徐々に強くなってくると定義されています。

また、発症前1ヶ月間におおむね100時間又は発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、病気と労災の因果関係が強いと評価されるのです。

つまり、時間外労働の時間が長いほど労災の可能性が上がるということです。

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脳卒中で労災認定されるには

以上のように、脳卒中に関する労災認定の基準は心身への過剰な負担がかかる業務状況であったかと、時間外労働の程度がどうであったかの2点がポイントとなっています。

では上記の点を踏まえて労災認定を受けるにはどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?

既往の病気に対する治療を適切に行う

たとえ労災認定が下りるような状況であったとしても、既往に脳卒中の原因となる病気があった場合、その病気の治療をきちんと行っていないと労災が認められない可能性があります。

つまり、自身の健康管理を怠っていたと見なされないように気を付けないといけないのです。

既往に対する適切な医療を受けることで、自身の問題で労災認定が下りないということを避けることができます。

正直なところ、これが一番大切なところになりますので、普段の健康管理は大切にしましょう。

労働時間や労働環境に関する記録を残す

労災認定には業務状況や環境、時間外労働という点を客観的に見られます。

つまり、労働者側が客観的な証拠を持っていれば、それを労災申請時に提示することで有利になるということです。

通常、業務状況等の客観的状況については企業側が労災申請時に労働基準監督署へ状況報告を行うようになります。

しかし、企業の中には労災になったことを隠す、いわゆるブラック企業も存在します。

そのような企業の場合、あの手この手で事実を隠蔽されてしまうと労災が適用にならない可能性があります。

「自分の体は自分で守る」という意識を持たなければならないことはある意味悲しいことではありますが、以下のような客観的証拠は保管しておく癖をつけておきましょう。

  • 労働時間の控え(タイムカード、家族との通信記録(時間と仕事をしている旨のメールなど))
  • 労働環境の写真
  • 勤務表
  • 同僚の証言

上記の客観的証拠はあくまで一例です。

他に客観的証拠となり得るものがあれば証拠保全に努めましょう。

 

終わりに

脳卒中と労災については近年基準が見直され、時間外労働にも目を向けられるようになりました。

労災による脳卒中が起きないことが一番なのですが、もし脳卒中になってしまった場合は上記の基準を思い出してみましょう。

もし困るようなことがあれば、迷わずMSWへ相談してみて下さい。

労災を利用して安心した療養生活が送れるようになりましょう。

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