訪問診療往診の違いについてご存知でしょうか?

どちらも自宅に医師が来てくれるものですが、実は内容はまったく異なっているのです。

がん患者で自宅で最期を迎えたい方にとって、訪問診療は無くてはならない存在ですので、この違いについてしっかりと覚えておきましょう。

今回は訪問診療と往診の違いについて、がん患者をモデルにその内容を解説していきます。

目次

訪問診療と往診の違い

訪問診療と往診、それぞれの目的

訪問診療と往診は具体的にどのような目的で受けるものなのでしょうか?

両者の目的を見ていきましょう。

訪問診療

まず、訪問診療は病状の悪化に伴い、定期的に外来通院することが難しい人を対象に行う診療です。

自宅に医師が来て診察を行うところは往診と変わりませんが、訪問診療は「病院の外来が自宅に来る」というイメージで捉えるのが一番わかりやすいかと思います。

通常の外来診察は患者の状態をもって計画的に通院期間を考え、次の受診予約を入れ利用になります。

訪問診療も診療計画を立て、定期的に自宅へ訪問し、診察を行うようになります。

これが「病院の外来が自宅に来る」というところに当てはまるものです。

診療計画は患者の状態によってその都度変更しますので、状態が落ち着いている人は2週間に1度の頻度から始まり、状態が不安定な人は訪問頻度を増やしていくのが一般的です。

往診

訪問診療が計画的に訪問し診療を行うのに対し、往診は突発的な事態に対応する計画外の訪問による診察を指します。

急な状態悪化が起きた際、自宅に訪問し診察を行うことが主な内容となります。

往診は「病院の救急外来が自宅に来る」というイメージが分かりやすい表現になるかと思います。

どんな時に訪問診療?往診?

上記のように、訪問診療と往診はその目的が異なることがわかりました。

では、具体的にどのような時にどちらを利用するようになるのでしょうか?

実は、基本的に訪問診療と往診は両方とも同時に利用していくようになるのです。

普段、状態が落ち着いている時には訪問診療で定期的に状態観察を行い、突発的に状態が悪くなった時に往診を利用する、というような使い方をするのです。

訪問診療で定期的に状態観察を行うことで、状態が急変する危険性を下げたり、あらかじめ急変が予測される場合に訪問頻度を増やしたりといった対応をとるようになります。

また、往診も普段の様子とどう違うのかを把握しておくことで、対処法もより効果的なものになります。

目的こそそれぞれ異なりますが、2つを重ね合わせることで手厚い医療を自宅で受けることができるようになるのです。

料金はどれくらいかかるの?

これらの訪問診療や往診を受けた時、料金はいったいどれくらいかかるのでしょうか?

実は、訪問診療や往診はすべて健康保険での自己負担額内の支払いで済むようになるのです。

外来に行けない人が代わりに自宅で医療を受ける、というものなので、普通に通院したり救急受診した時に保険証を見せて支払う金額で済みます。

負担割合は世帯の所得や年齢によって異なりますので、以下のリンクから対象記事をご覧ください。

70歳未満の方が患者の場合はこちらをご確認ください。

70歳以上の方が患者の場合はこちらをご確認ください。

がん患者と訪問診療

では実際に訪問診療や往診を利用した時の内容を紹介します。

自宅で長く生活するためのツール

訪問診療の対象は上記したように、病状的に通院が困難となった人が対象となります。

例えばがん患者の場合、病状が進行し病院に行くことが難しくなったり、外来の待ち時間を過ごすことでさえもつらい状態になった時に訪問診療を利用することがあります。

また、現時点では通院が可能でも、近い将来通院が困難となる場合であれば早めに利用を開始することもできます。

訪問診療によって、自宅でも引き続き医療を受けられることで、自宅で長く生活することができるようになる1つのツールと言えるでしょう。

状態に合わせた対応をしてもらえる

がん患者の場合、病状が進行することで様々な身体症状が発生します。

がんによる体の痛みやだるさ(倦怠感)、吐き気や食欲不振など、日常生活を送る中で不快に思う症状と上手に付き合わなければなりません。

このような症状に対し、訪問診療による定期的な診察で出て来る症状に対しての適切な処置を受けられます。

また、状態によっては訪問回数の増加や、緊急時の往診も対応するようになります。

基本的に、訪問診療日以外に状態の変化があった場合、電話で訪問診療を受ける医療機関へ連絡します。

状態を伝えることで、経過観察の指示が出ることもあれば、往診対応に来たり、救急車を要請するよう指示が出たりすることもあります。

「些細な症状だからわざわざ病院に行かなくてもいいかな…」と遠慮してしまいがちなことでも、電話で気軽に尋ねられるのが訪問診療の強みであるとも言えます。

臨終時も対応してくれる

そして、いよいよ臨終の時という場合においても、訪問診療はしっかりと対応してくれます。

状態が厳しくなった時の対応方法や看取りの対応、臨終後の死亡診断書の作成まで責任をもって対応してくれるのです。

いざ看取りの時となるとどうしてもパニックになってしまいがちですが、あらかじめ予想される体の変化や、必要な手続きなどを事前に教えてくれるので、安心して最期を迎えることができます。

また、医療機関によっては亡くなった後の遺族に対するケアを逝去後しばらくして行うところもあり、患者本人だけでなく家族へのフォローもしてくれるのです。

他の制度のサービスと併用して自宅生活を支える

訪問診療は単独で利用することもできますが、より効果的に利用することを考えるのであれば他のサービスも併用することを考えてみましょう。

例えば、訪問診療が来ない日の対応を訪問看護に依頼することで、次の訪問日までの不安を軽減したり、状態変化に対し、より柔軟に対応ができるようになります。

もちろん、介護保険サービスも併用できますので、普段利用している介護サービスも時間の調整は必要ですが、継続して利用することが可能です。

そして、訪問診療を利用することは自宅で医療面のサポートを受けられるということから、他のサービスにも医療的な情報が共有できるところに強みがあります。

サービス利用時の病状的な留意点や、サービス利用時の些細な状態変化を共有することで、より安心した生活を送ることができるようになります。

まさに、自宅で生活する上で支えになるサービスと言えるでしょう。

終わりに

往診と訪問診療の違いはお分かりになりましたでしょうか?

どちらも自宅で長く生活するために大切なものです。

それぞれの役割をきちんと捉え、有効活用していきましょう。