地域包括ケアとはどういうものなのでしょうか?

ここまで地域包括ケアの背景と概要、具体的内容について解説してきました。

まだ解説をご覧になられてない方はぜひ以下の記事をご確認ください。

 

地域包括ケアって何?①背景や概要は?

地域包括ケアって何?②具体的な内容は?

そして、今回は地域包括ケアシステムの核となる地域ケア会議と、地域包括ケアシステムの課題について解説していきます。

目次

地域ケア会議とは

地域包括ケアシステムを構築する手法

地域包括ケアシステムでは、各地域における課題の解決策を検討する場として地域ケア会議の活用を推奨しています。

厚生労働省はこの地域ケア会議を「高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法」と位置付けています。

特徴としては、各地域によって地域ケア会議を段階に分けて行い、個別の問題から徐々に規模を大きくしていき、最終的に地域全体の課題解決に向けて動いていくというものです。

各レベルにおける会議の名称も地域によって自由に決めることができ、地域の特性に合わせた会議を行うことができるのが特徴です。

レベルの内訳は以下のとおりです。

①個別レベル

規模としては一番小さいものになります。

地域住民の個別の問題について取り上げますが、地域の課題はこういった個別の課題が集まることで見えてくるのです。

例:「認知症のAさんが夜になると町内を徘徊しているらしい。何とかならないか。」

「一人暮らしのBさんが最近身の回りのことをするのが難しくなってきているようだ。」

②日常生活圏域レベル

個別レベルの問題を日常生活圏域(町内・地域)レベルで集めたものです。

個別の問題が集まり、その地域の特色や課題が見えてくるようになります。

例:「認知症の家族がいる世帯は他にも多く、徘徊に困っている人もいるようだ。地域で認知症の人を見かけたら声かけ運動を行おう。」

「一人暮らしの高齢者世帯を対象に、ボランティアによる家事援助サービスを始めよう。」

③市町村レベル

日常生活圏域レベルの課題を集約し、自治体としての取り組みを検討するものです。

各関係機関の代表レベルによる会議やネットワーク構築によって、課題を普遍的なものと捉え対応するようになります。

例:「認知症についての啓発キャンペーンを行い、認知症の人への理解を広める。」

「一人暮らしの高齢者世帯の実態把握を行い、地域包括支援センターによる訪問活動を行う。」

④専門レベル

上記3つのレベルの問題をより専門的な視点から考え対応を行うというものです。

個別レベルから市町村レベルまで幅広く対応するとともに、権利擁護や介護予防など専門的な対応を特徴としています。

 

地域ケア会議の機能

地域ケア会議は各レベルごとに行いますが、会議の目的によって担う機能も異なっています。

この機能は大きく5つに分類され、各地域で開催する会議にどのような機能を持たせるのかという裁量も自由に認められています。

以下の①~⑤のうち、数字が小さいほど実務者のレベル、大きいほど代表者のレベルで会議が行われるのが特徴となります。

①個別課題解決

出てきた個別の課題に焦点を当て、解決策を考えるというものです。

機能としては個別レベルでの会議に付与されることが多いことが特徴です。

②ネットワーク構築

課題解決に向けた関係者や関係機関のネットワーク構築を行うものです。

個別レベルから市町村レベルまで幅広く担うことができます。

③地域課題発見

その地域における課題が何か、新たな課題が無いかを発見することを目的としています。

個別のケースから課題が浮き彫りになることも考えられます。

④地域づくり・資源開発

住みよい地域をつくることや、その地域にあった社会資源を作ることを目的としています。

その地域の特色が出るため、他の地域とは異なった独自のアイデアが出ることもあります。

⑤政策形成

課題をもとに普遍的なサポート=政策に落とし込むことを目的としています。

市町村レベルや専門レベルが担うことが多く、個別のケースの対応がまとめられた集大成になるものを作り上げる役割を担っています。

 

地域包括支援センターが主催することが多い

地域ケア会議を開催するものとしては、地域の実情をよく知る地域包括支援センターが一番に挙げられています。

高齢者への支援の窓口として、権利擁護や介護保険業務など幅広く活動していることから、地域ケア会議における役割が大きいものであると位置づけられているのです。

なお、地域ケア会議は地域包括支援センターだけでなく、医療機関やサービス事業所等が発起人になっても構わないとされています。

そして、会議の構成員としては「自治体職員、包括職員、ケアマネジャー、介護事業者、民生委員、OT、PT、ST、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士その他必要に応じて参加」することが示されており、直接サービス提供にかかわらない専門職種も参加するよう明記されています。

地域包括ケアシステムの課題

ここまで地域包括ケアシステムについて内容を述べてきました。

地域に根差した活動によって地域独自の課題を解決していく取り組みでありますが、一方で以下のような課題も出てきています。

地域住民の協力が得られるか

地域包括ケアシステムの核は「地域住民の参加」です。

問題解決に向けて誰かが手上げをして、それに賛同してくれる人がいないと話がすすみません。

近年、近所づきあいという言葉があまり聞かれなくなるほど地域住民同士のつながりは希薄化してきており、隣に誰が住んでいるかもわからないという状況が当たり前のことのようになってしまっています。

特に都市部ではこの傾向が顕著になっており、近所の人同士であってもあいさつすらでず、そのことでお互いに何も思わないということも見られています。

こういう「地域力」が弱い地域ほど、最初に手上げをする人の存在が大きいとされています。

そして、この手上げを地域包括支援センターを中心に行うことが推奨されています。

 

人口の年齢構成

各地域における人口の年齢構成は異なっています。

若年者の多い都市部では何か活動を行う時に役割を担える人が多いのですが、高齢者が多い地方や過疎地では、役割を担える人材が乏しいのが課題です。

このような地域の特性にあった対応策を検討していかなければならないのですが、役割の担い手がいないのは大きな問題です。

一方で、高齢者に役割を担ってもらうという方法も考えられており、元気な高齢者にボランティアとして活動してもらうことが一例として有名です。

 

終わりに

地域包括ケアについて3記事にわたり解説していきました。

現状としてそう遠くない未来に高齢化の問題が控えているのですが、地域包括ケアシステムによって対策を図ろうとすでに動き始めています。

課題はありますが、その中で今私たちができることが何かを自覚しながら活動することが求められています。