心臓病の人が行う心臓リハビリテーションについてご存知でしょうか?
病気やケガをした後に行うリハビリテーション。
心臓病を患っている人も、特別なリハビリテーションを受けることで身体機能を回復させることが望めます。
今回は心臓リハビリテーションの特徴と方法について解説していきます。
目次
心臓リハビリテーションとは
心臓とリハビリテーション
例えば、脳卒中の患者が発症後にリハビリを病院で受ける場面は割とイメージしやすいかと思います。
平行棒を使った歩行練習や、言葉の訓練といったものが特徴的であり、過去には長嶋茂雄氏が後遺症はあるものの、厳しいリハビリを乗り越えて回復されたのが良い例であると言えます。
同様に、骨折をした患者もリハビリを行い、社会復帰をすることもよくある話です。
一方で、心臓病の患者がリハビリをすることについてはどのようなイメージがあるでしょうか?
「心臓に負担がかかるからあまり動かないような・・・」
「そもそもリハビリしていいの?」
というような消極的なイメージがあるかもしれません。
しかし、心臓病の人こそ、回復に向けたリハビリテーションが重要なのです。
心臓リハビリテーションの狙い
心臓リハビリテーションの狙いは、病気によって低下した心臓の機能回復です。
心筋梗塞や心不全などの心臓病を発症したり、心臓を手術した後の人は心臓の機能が低下し、健康な状態に比べ活動がしにくくなります。
心臓の機能が低下することで運動機能が低下したり、体を調節する機能が落ちたりするので、結果として生活に影響が出てくるようになります。
心臓病になった人が陥りやすいのが、上記したように「動いてはいけない」という先入観から行動を自ら制限してしまったり、逆に過度な動きでかえって心臓に負担をかけてしまうということです。
専門的な心臓リハビリテーションでは、患者の状態にあった負荷をかけることで安全に機能回復を図り、体力を戻していくことが最大の狙いとなっているのです。
心臓リハビリテーションの特徴と目標
心臓リハビリテーションは低下した心臓機能の回復から始まり、最終的には社会復帰を目標にしています。
そのため、リハビリプログラムは社会復帰後の生活スタイルを質の良いものにするべく、運動だけでなく病気に対する指導なども並行して行われるのが特徴です。
また、運動そのものは心臓病の原因となる運動不足を解消することにも役立ち、病気の再発予防にもつながってきます。
状況によっては入院中だけでなく、退院後に社会復帰してから外来でリハビリを定期的に行うこともされており、実生活で心臓機能がどれくらい行動に影響しているかを図りながら行われることもあります。
心臓リハビリテーションの内容と方法
ここからは心臓リハビリテーションの内容と方法について解説してきます。
心臓リハビリテーションの流れ
では心臓リハビリテーションの流れについて見ていきましょう。
心臓リハビリテーションは心臓病の発症後から始まります。
一般的にリハビリテーションは急性期・回復期・維持期の3つに分けられます。
心臓リハビリテーションを上記の3つの時期で分類した場合、以下のようになります。
- 急性期
病気の発症直後から1~2週間程度の時期に当たります。
病気の治療が優先される時期ですが、治療に並行して身の回りの動作を自身で行えるようなリハビリを行うようになります。
負荷がどれくらいかけられるのかを見計らいながら、身体機能の回復を目指します。
この時期はリハビリに併せてこれまでの生活習慣の見直しについての指導を行うことも大切とされています。
適度な運動の必要性や内服管理、禁煙指導など様々なことを患者に指導します。
急性心筋梗塞の人などは早ければこの時期で退院される場合もあります。
- 回復期
病気の発症から2~3か月程度までの期間が回復期として定義されます。
病院を退院し、社会復帰を目指したリハビリを継続するようになります。
外来リハビリを継続しつつ、自宅でも機能回復に向けた自主的なリハビリを行うようになります。
この時期では、退院し生活をすることで見えてくる課題にも適切に対処することが重要です。
職場復帰した後の身体的な負荷や、生活習慣の見直しといったものの重要性を肌で感じることが多い時期になります。
- 維持期
回復期を経て生活スタイルが心臓病に合わせたものになった後、それを長く維持することが重要です。
病気の再発防止のために、無理なく続けられる取り組みを各自のスタイルに合わせて獲得していくことが重要です。
特に心臓病は再発する危険性が高く、少しの気の緩みが病気を再悪化させることにつながります。
リハビリを継続することは患者本人の努力だけでなく、周囲の人もサポートすることが重要となります。
心臓リハビリテーションの実施内容
では心臓リハビリテーションでは具体的にどんなリハビリを行うのでしょうか?
上記の治療時期に分けて解説します。
- 急性期
救急治療が終わり、リハビリ開始の判断を主治医が行った段階で、セラピストが本人の運動機能を評価します。
ベッドからの起き上がり、起立、歩行を段階を分けて行い、どの部分まで可能なのか、歩行が可能な場合、距離はどれくらい歩けるのかを評価するのです。
この時、心臓の機能にも着目し、運動によって負荷がどれくらいかかるのかも確認します。
- 回復期
急性期を脱した後、具体的な機能回復を目標としてリハビリを行います。
歩行練習は距離を伸ばし、心臓機能を強化しながら活動範囲を広げていきます。
また、自転車こぎのリハビリを行い、持久力の強化を図ります。
心機能の変化に注意しながら、スタッフの監視のもと行われるので、安全性も確保されています。
外来でのリハビリでも同様のことが行われ、実生活での負荷を照らし合わせ課題を洗い出していきます。
リハビリと並行した生活指導も同時に行われ、再発予防に努めていきます。
- 維持期
外来リハビリも終了し、自身の力で再発予防に努めるようになります。
自宅で続けられるような運動の方法を覚え、実践あるのみです。
定期的な外来通院で身体状況のフォローを受けるようになりますので、心機能の低下があればすぐに指摘されることでしょう。
心臓リハビリテーションの注意点
上記のような心臓リハビリテーションは専門家の指導のもと行われるリハビリです。
心機能の負担を図りながら行うものであり、かつリハビリは心機能が衰えた状態から開始するため、安全性を確保する必要があります。
過度の運動はかえって心機能を悪化させる危険性がありますので、無理をしない範囲で決められた運動と負荷をかけながら行うことが重要です。
また、運動だけでなく食事や禁煙、内服といった心臓病の再発予防対策も同時に行ってはじめて効果が現れるものですので、これらのことを置き去りにせず実践していくことが大切です。
そして何より、リハビリは短期間で終えるのではなく、長く続けることが大切です。
せっかく回復した心機能を落とさないように、運動を継続できる工夫を心がけましょう。
終わりに
心臓リハビリテーションは心臓病の人にとって非常に重要な意味を持ちます。
身体機能の回復・維持を図り、健康な生活を送れるようになりましょう。
もし心臓リハビリテーションのことが気になる人は、かかっている病院のリハビリスタッフに尋ねてみましょう。
安心した在宅生活を送れるようになりましょう。