入院中に介護が必要な状態になってから介護保険を申請される人がいます。
病気によって身体の状況は変わりますので、先を見据えた判断として良い選択と言えるでしょう。
実は入院中に介護保険を申請することは、自宅にいる時に申請するのと比べていくつか利点があるのです。
今回は入院中に介護保険申請をする利点と、効果的な申請時期について解説していきます。
目次
入院中の介護保険申請の利点とは
認定結果が下りるまで在宅で過ごす時間が少なくなる
まずは介護保険申請を行ってから認定が下りるまでの期間についてです。
自治体によって差がありますが、2017年現在、介護保険を申請してから認定が下りるまで約1ヶ月間の時間を要しています。
認定が下りるまでの間、介護保険のサービスが利用できるまで時間がかかります。
一応、暫定サービスという、だいたいこれくらいの認定が下りそうという目安を付けて早めにサービスを使い始める方法もあります。
しかし、認定が予想より軽く下りてしまった場合、下りた認定で利用できるサービス量を超えた部分は全額実費負担となってしまいます。
きちんとサービスを利用するには、介護認定が下りてからの方が無難だと言えます。
そのため、入院中に介護保険申請を行うことは、認定結果が下りるまでサービスが使いづらい時期を病院で過ごすことができ、自宅で生活に困ってしまう可能性が少なくなるということにつながるのです。
もちろん、介護保険申請をするためだけで入院をすることはできません。
病院はあくまで入院が必要な病状の人が入院するところですので、その部分については気を付けましょう。
病院のスタッフからの情報が調査に反映される
介護保険申請を行うと本人の様子を見に来る訪問調査を受けるようになります。
訪問調査では実際の体の動きや認知面の評価などを行います。
ここでの調査内容が介護認定に大きく影響してくるのですが、自宅で調査を受けるのに比べ、病院での調査はある利点があります。
それは、病院のスタッフからの客観的な情報が調査員に伝わるということです。
入院は治療を行うためにしていることですので、調査員は当然患者本人の現在の病状について確認をするようになります。
しかし、介護認定を受ける人の中には、「介護を受けたくない」「自分は元気だ」などという高いプライドを持っている人も少なからずいます。
そういった人が調査の時に、実際にはできないことを「できる」と言い、正確な情報が調査員に伝わらず、結果として実際の状況より軽い認定が下りてしまう可能性もあります。
また、病気によっては時間帯ごとでできることとできないことが大きく変わってくるものもあり、万が一何でもできる時間帯に調査を行うと、できる方で調査結果を取ってしまう可能性も否定できません。
上記のことは家族が調査に立ち会って事実を伝えることで回避できることなのですが、仕事などで調査に立ち会えなかったり、本人の前で調査結果を否定するようなことが言えなかったりという人もいることでしょう。
そんな時に第三者である病院のスタッフが率直かつ客観的な医学的情報を調査員に伝えることが、とても効果的であると言えます。
患者の状態が正確に調査に反映され、正しい結果が下りるようになるのです。
介護保険申請を行う口実にしやすい
自宅にいる時に介護保険申請を拒否していた人が、入院中に申請を受け入れたというケースは多く存在します。
これは主として以下のような要因が考えられます。
- 病気により自身の体の変化を自覚した
- バリアフリーな病院環境と自宅を比べて、自身が今できることとできないことを客観視できた
- 家族ではなく病院スタッフという第三者の視点から自分の状態を知ることができた
- 入院をきっかけに、これまでの生活を改めたいと思うようになった
いずれも入院によって起こった心身の変化によるものと言えます。
自宅にいる時はなかなか腰が上がらなかったことも、入院というきっかけ1つで気持ちが変わることもあるのです。
特に、病気をして身体状況が変わったことは、その後の生活を見直す上で重要な点であり、同時に介護保険申請を行う立派な理由となります。
「調子が悪くなったことで、家に帰って困ることがあるだろうから申請してみようよ」
「今は環境が整っているから動けるけど、家に帰ると動きづらい環境で過ごさないといけないから」
「信頼している先生が介護保険について申請をすすめていたよ」
上記のような声かけは入院中だからこそできるものであり、とても効果的であると言えるでしょう。
入院中に介護保険申請をする場合の効果的な時期
では、実際に入院中に介護保険申請をする場合、どの時期が一番効果的なのでしょうか?
自宅退院が近づいてきたら申請する
介護保険申請は上記したように約1ヶ月ほど時間を要します。
あらかじめ、退院の時期がわかっているようであれば、結果が下りるころから逆算して申請をすると、退院に合わせてサービス利用ができるようになります。
つまり、退院の約1ヶ月前に申請をすることが効果的であると言えます。
ただし、認定が下りた後に利用を考えているサービスがある場合は、そのサービス調整期間も含めて考える必要があります。
例えば自宅内をバリアフリーな環境にする住宅改修は、工事個所の見積もりや市役所への申請、着工という期間を必要としますので、最低でも数週間は時間が必要となります。
退院後の生活に向けて何が必要なのかを見極めながら、自宅退院の準備をすすめていきましょう。
転院を挟む場合は原則として転院後に申請する
急性期病院から別の病院へ転院する場合は、介護保険申請を一旦見送ることを考慮しましょう。
これは、認定調査が退院直前でないと行われないことに起因します。
自宅退院ではなく転院ということであれば、自宅にはまだ帰らないということになりますので、調査が先延ばしにされてしまう可能性があるのです。
そのため、転院後の退院時期を考慮しながら申請をする必要があるのです。
ただし、転院後の入院期間があらかじめわかっており、かつ短期間である場合は転院前から申請しておくことが望ましい場合もあります。
例えば転院後2週間だけ入院できるということがわかっている場合、転院してから申請すると結果が下りる前に退院しなくてはなりません。
しかし、転院前から申請しておけば認定が下りるのも早くなります。
その場合、申請時に「転院はするけど短期間の入院であり、病院側から申請をしておくよう言われた」と介護保険申請の窓口へ伝えることが必要です。
こうすることで、転院を挟んでも介護保険の認定が早めに受けられるようになるのです。
施設入所を考えている場合は早めの申請を
退院後の生活場所を介護施設にすることを考えている場合は早めの申請をすることをオススメします。
介護施設自体は地域に数多く存在しますが、それぞれ料金や待機者数が異なります。
希望する施設にすぐ空きがない場合、申し込みをして待機する必要があります。
施設入所はほとんどの場合、何らかの介護認定を受けていることを条件にするところが多いです。
介護施設の入所を入院中に考える場合、おそらく何らかの認定が下りるような状態であることが多く、その場合は認定を一刻も早く受けておくことがその後の施設検索や申し込みを行う上で有利に働くのです。
仮に一旦転院を挟む状況であっても、施設入所には上記の理由から時間がかかることが予想されます。
そのため、申請窓口に状況をきちんと伝え、早めに申請を受理してもらうことが大切です。
終わりに
入院中の介護保険申請は上記のような利点があります。
申請の時期も状況によって異なりますので、今どういう状況にいるのかを把握して申請しましょう。
もし申請のことで困るようなことがあれば、迷わずMSWへ相談してみましょう。
安心した在宅生活が送れることを目指して行動してみましょう。